森田療法は、東京慈恵会医科大学の初代精神科教授であった森田正馬(もりたまさたけ/または もりたしょうま・1874~1938)が創始した日本独自の精神療法で、その後は世界的にも注目されるようになりました。森田自身が学生時代に神経症に陥って自力で克服した体験をもとに、東京大学を卒業して医師になり、独自の治療法を創出しました。フロイトの精神分析が主流の当時、治す方法がないとまで言われた神経症を森田正馬は次々に治療して行きました。
森田療法が適応となる神経症の代表的な症状には、例えば以下のようなものがあります。
・対人恐怖症。現在で言う社交不安障害。あがり症、赤面恐怖、視線恐怖症等も含む。
・手の震えや声の震えに悩み、生活に支障がある。
・ガスの元栓を閉め忘れていないか、鍵を閉め忘れていないか等、気になる事を延々と確認し続け、日常生活が成り立たなくなる。不潔恐怖等で手洗いを繰り返すのもこれに含まれる。
・不眠症。
・乗り物恐怖症。閉所恐怖症。
・心臓神経症。現在で言うパニック障害。
・不安障害。漠然とした不安感に常に苛まれ、仕事や家事等に手が出せない。
・抑うつ状態。抑うつ神経症等。
・身体の様々な不調が気になりドクターショッピングを繰り返すが検査結果等は異常なし。それを繰り返し生活が成り立たなくなる。病気恐怖症もこれに含まれる。
その人が森田療法に向いているか否かは、「自己内省」があるか否かによって判断できます。例えば「ガスの元栓を閉め忘れていないか何十回も確認を繰り返す」人を例にして説明しましょう。
確認行為を繰り返しつつ「自分はなんて馬鹿な事をやっているのだろう。こんな事はやめてしまいたい。何とか治したい」という気持ちがあれば、自己内省があるのだと言えます。しかし中にはそのような内省心が無く、自分の気持ちのままに、気が済むまで確認行為を繰り返すタイプの人もいるようです。森田先生はそのように内省心なく行為を繰り返す人は森田療法では治せない人だとしています。
森田先生の治療により神経症を克服した患者達(その中には医師、新聞記者などもいました)が、先生の意志を継いで森田療法を世に広める種々の活動を行いました。それが生活の発見会の当初の成り立ちとなっています。
森田療法の考え方を簡単に説明する事も可能ですが(その為のテキストを生活の発見会で作成しています)簡略化した説明や、森田の考え方の一部のみを説明するのは適切ではなく、森田療法の全体を体系的に知って頂く必要があります。(例えば森田の有名な言葉に「あるがまま」がありますが、その事についてのみ簡単に説明するのは、森田の部分的説明に過ぎず誤った解釈を生みやすい)。
森田療法に興味のある方は是非、書籍を一冊読んで頂ければと思います。以下に代表的な森田関連書籍をご紹介します。
森田療法の概要が知りたい方
『心配性を治す本』青木薫久 ベスト新書 806円
『はじめての森田療法』北西憲二 講談社現代新書 990円
森田療法の概要でなく、体系的な内容をきっちり知りたい方
森田先生自身が著わした原著として有名な書籍
『新版 神経質の本態と療法』森田正馬著 白揚社 2,090円
『神経衰弱と強迫観念の根治法』森田正馬著 白揚社 2,090円
なお、生活の発見会に入会すれば、機関紙「Hakken」が毎月郵送されて来ます。これだけでも毎月続けて読めば、森田療法を理解する事が出来ます。
お読みになった内容について、集談会でご意見・ご感想・疑問点等のご質問等を頂ければ、それについて知識の範囲内でお応えできればと思っております。
上記では4冊の書籍をご紹介しています。「自分自身が読んで納得したものでなければ紹介したくない」という方針ですので、まだまだ数が多くはありません。『心配性を治す本』は何を隠そう40年以上前に読んで、即発見会に入会したキッカケとなった本です。森田正馬が著わした二冊の書籍は過去に二度は読んでいるはずです。今回『はじめての森田療法』をまだ読んでいなかったので、アマゾンで取り寄せ一晩で読破しました。今後も追加していきたいという思いはありますが、「選択肢が多すぎると迷ってしまい、逆に選択しなくなる」という人間の性質を想うと、あまり数を増やし過ぎるのもどうかという感じですね。でも思ったのは「これ一冊のみでオーケー」という本はないということです。何冊かは読んで欲しいというのが本音です。(s.u)2023.10.27